社長が悩む「給与の金額」──中小企業で正解が見えにくい本当の理由

 

Posted by 向井 on 2026年5月10日

社長が悩む「給与の金額」──中小企業で正解が見えにくい本当の理由

最低賃金の引き上げ、初任給の上昇、春闘の報道…。4月になる前に「給与をいくらにするべきか」で迷う社長は少なくありません。
本稿では、給与の問題を“構造”として整理し、腹落ちと次の一歩につながる考え方をまとめます。

導入:毎年4月、社長の頭を悩ませるテーマ

「最低賃金がまた上がった」「新卒の初任給が引き上げられている」「春闘は満額回答らしい」——。

そんなニュースを横目に、4月を前にして給与の金額について頭を悩ませている社長も多いのではないでしょうか。
頑張ってくれている社員にはできる限り報いたい。一方で、いったん上げた給与は簡単に下げられない。この先も毎年上げ続けていけるのかという不安もある。

給与は、「人を大切にしたい」という想い「会社を守らなければならない責任」が真正面からぶつかるテーマです。
本コラムでは、「給与はいくらにすべきか?」という問いを、構造的に整理していきます。

目先の課題:相場は分かるが、答えが出ない

給与を考える際、多くの社長がまず気にするのが「世間の相場」です。国税庁の「民間給与実態統計調査」などを見ると、
平均給与や、企業規模別・年齢別の水準が分かります。

しかし、相場を知ったからといって、「自社はいくらにすべきか」という答えが出るわけではありません。

  • 平均より低いと不満が出そう
  • 平均以上にすると、将来が不安
  • 今は払えても、数年後はどうなるか分からない

こうした迷いが社長の中に積み重なっていきます。

中小企業5大課題との接続:給与は“人の問題”だけではない

主軸:人手不足

「給与を上げれば人は定着する」と思われがちですが、実は“給与の決め方”そのものが人手不足を生んでいるケースも少なくありません。
基準が曖昧なままの昇給は、不公平感や将来不安を生み、結果として離職につながります。

波及①:資金繰り

「人件費は払えれば問題ない」と思われがちですが、実は固定費として積み上がる構造が資金繰りを圧迫します。
特に給与は、一度上げると戻せません。短期的に無理のない水準でも、中長期では大きな負担になることがあります。

波及②:業務効率化

「忙しいから人を増やす」と思われがちですが、実は業務の属人化が進み、給与に見合う成果が測れなくなることもあります。
誰がどの価値を生んでいるのかが見えないままでは、給与の判断も感覚頼りになってしまいます。

給与の問題は、単なる「人件費」ではなく、人・お金・仕組みが連動した構造の問題なのです。

専門家視点での構造説明:給与は「コスト」ではなく「設計」

実務の現場でよく見るのは、給与を「感情」か「相場」だけで決めてしまっているケースです。
しかし本来、給与は会社が生み出す付加価値をどう分配するかという設計の問題です。

  • その成果は個人の力か、チームの力か
  • 会社の信用や仕組みが生んだ成果ではないか
  • 将来にわたって再現できる成果か

こうした視点を持たずに給与を上げてしまうと、後になって調整が効かなくなります。
給与を考えるときは「今払えるか」ではなく、「これからも払い続けられるか」という視点が欠かせません。

具体策(示唆):答えは一つではない

もちろん、評価制度や等級制度を整えることは有効です。ただし、それ自体が目的になると、かえって現場とのズレが生じます。

大切なのは、
何に価値を置く会社なのか
何を評価し、何を評価しないのか
社員にどう成長してほしいのかを、
社長自身の言葉で整理し、対話することです。

給与賞与面談や評価のフィードバックは、人を縛るためではなく、
お互いの期待値をすり合わせるための場として設計すると、納得感が変わります。

FAQ:よくある疑問への整理

Q1. 平均給与より低いと問題でしょうか?
要約:平均より低いこと自体が問題ではありません。大切なのは理由と説明ができるかどうかです。平均値はあくまで参考です。会社の成長段階、利益体質、職種の違いなどにより最適水準は変わります。
「なぜこの水準なのか」「どんな成長を期待しているのか」を言語化し、社員と共有できると納得感は大きく変わります。
Q2. 給与を上げれば離職は防げますか?
要約:給与だけで離職は防げません。評価の透明性や成長実感と組み合わせて初めて効果が出ます。価値観が多様化する中で、給与は重要要素の一つですが万能ではありません。
仕事内容の納得感、評価の一貫性、面談での対話などが整っているほど、給与施策の効果が安定します。
Q3. いつ給与を見直すべきですか?
要約:思い立ったときではなく、定期的に見直すのがおすすめです(例:年1回)。臨時の判断は感情や場当たりになりやすく、不公平感の原因になります。
見直しのタイミング(例:年度初め)と観点(例:評価・役割・会社の余力)を固定し、透明性を高めることが重要です。

まとめ:給与は「経営者一人で決めない」

給与の問題は、年齢や立場、環境が変わるほど見え方が変わります。だからこそ、社長一人で抱え込んで結論を出すことは、
かえってリスクになることもあります。

第三者の視点を入れながら、慎重に、しかし先延ばしにせず向き合うこと。
それが結果として、社員の安心と、会社の持続的な成長につながります。

行動喚起(CTA)

もし「今の決め方でいいのか少し不安だ」と感じたら、
まずは顧問税理士や社労士、商工会議所の経営指導員などに、
“考え方の整理”から相談してみてください。

答えをもらう必要はありません。考える材料を増やすことが、次の一歩になります。